妖魔05~正道~
血を流しすぎている。

魔力の残量はそう多くない。

正体を見破っただけで、犠牲が大きい。

男は姿を隠しはしない。

俺の能力は、解っていると見て良い。

闇に隠れようとも、一度見た相手を俺の鼻は見つけ出す。

しかし、それだけだ。

目の前の男の能力である攻撃転移能力については、何ら攻略出来ていないのだ。

男は手品のように片手に五本ずつ、計十本のナイフを出現させる。

「貴様の言うとおり、姿を見られては暗殺者としては失格。だが、姿を見た者を消せば、それは無意味となる」

「改革派の信念を、なめるんじゃねえ」

暗殺者は人間のニオイと妖魔のニオイをさせている。

葉桜のようなニオイではない。

質が違う。

だから、何だ?

暗殺者が俺の邪魔をするのなら、始末するだけだ。

「貴様は強敵だと認識した」

暗殺者の傍に黒い渦が巻き起こる。

「尊敬に値する」

黒い龍が渦の中から、顔を覗かせる。

「だからこそ、ミールオルディンにとっては天敵」

「だるまさんが、転んだ」

俺は龍が姿を現す前に相手の動きを封じる能力を発動させる。

暗殺者は止まっている。

しかし、安易に近づいて攻撃する事の危険性は、葉桜の時に学んだ。

「あっち向いてほい」

龍の頭を上に向けて準備を万端にし、俺はナイフを構える。
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