妖魔05~正道~
「吟ちゃんと出会ったのは、靜丞が結婚する時に紹介してもらった時にゃ」

「爺さんがか」

「う、うう、丞は酷い奴にゃ」

いきなり、涙を流し始めた。

「何でそうなるんだ?」

「琴は靜丞よりも、年上さんにゃ」

「わ、悪かった。琴は若く見えてたからな。爺さんとは別物だと思ってた」

全く、見えないな。

やっぱり、琴も若返りの魔術を使っているのか。

「にゃあ、吟ちゃんには悪いけど、惚れちゃうにゃ」

さっき、吟を失ったばかりでそれはない。

面倒なので口には出さなかった。

しかし、あの時の哀しみが嘘のような対応だな。

「随分、吟と仲が良かったな。そんなに吟の事が好きだったのか?」

「吟ちゃんは琴のたった一人の友達にゃ」

「そうか」

不幸能力連発では、誰も近寄ろうなんて輩は現れないわな。

例え、目の前の女性がどんなに綺麗だとしてもな。

「でも、途中で吟ちゃんは、遠くにいっちゃったにゃ」

「別れる理由でもあったのかね」

「解らないにゃ。吟ちゃんは昔から旅が好きって言ってたにゃ。その時には、琴にも旦那様がいたにゃ。だから、一緒に行く事は出来なかったにゃ」

「お前、結婚してたのか?」

「人間に優しくされてイチコロにゃ」

何か、妖魔と人間との認識がすごく軽いんだな。

本来は、これくらい軽い方がいいんだがな。

「でも、少しして、不慮の事故で亡くなってしまったにゃ」

「そうか」

不幸を発動したようにも思えるが、一人でいるときに事故で亡くなってしまったのかもしれない。
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