妖魔05~正道~
二人歩き続けて、思い出の場所に辿り着いた。

丘の上の桜の木。

今も街並みを見下ろせる。

俺達の中で色々と認識が変わった。

でも、丘の上の世界は変わっていなかった。

「いい、眺めだね」

「そうだな」

美咲の横は、どこか憂いを帯びている。

風に靡く髪は、とても綺麗だ。

「お願いがあるの」

「聞ける事なら聞こう」

「あなただけの知ってる私の事を話して」

美咲を見ると、真剣な目だった。

困った。

きっと、吟だろう。

美咲に耳打ちした事で、美咲が悟ったのかもしれない。

「言えない」

「どうして?」

「君を、死なせたくないからだ」

「あなたの知っている事を話したら、私が死ぬの?」

「死ぬ」

「そっか」

「ああ」

気付けば、美咲が俺の前に立っていた。

そして、ビンタをかまされる。

「いてえ」

「うじうじしてんじゃねえ、だっけ?」

美咲が、悲しげな笑顔を浮かべている。

「何故、それを」

俺は驚く他にどうすればいいのか見当たらなかった。

名前を知っていることだってそうだし、過去をしっている事だってそうだ。
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