妖魔05~正道~
「面倒くせえ」

マリアを下ろし、戦闘準備を行う。

「お前を殺せば、女を奪えるという事だな」

「おやおや、私に死地を与えてくれるのですか?それは嬉しい限りですが、マリアさんにお仕事の依頼もされているので、立ち止まってはいられませんがね」

能力なのか、両手にナイフを作り出した。

「本当に、俺向きだな」

拳を握り締め、俺は走り出した。

男も走り出し、ナイフを投げつけようとする。

「あっち向いてホイ」

振るった逆方向に指を向け、ナイフを投げさせようとしない。

「ほう、愉快な技ですね」

隙をついて傍までくると、腹を射抜くために腕を伸ばす。

しかし、男は口から何かを吐きつける。

能力を使う暇がなく、腕で防ぐ。

バックステップで二歩ほど下がり、体勢を整える。

「おや、離れていいんですか?」

刹那、片腕のコントロールを効かなくなり、力なく落ちる。

「麻痺か」

「おや、全身に回るようにしたんでしたが、分量が足りませんでしたか」

薬物による耐性を付けるために里で訓練は受けておいた。

完璧とまではいかないが、ある程度は防ぐ事が出来る。

「面倒くせえ」

男の能力は侮れない。

最初から本気ではあるが、コンマ一秒でも油断は出来ない。
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