妖魔05~正道~
「嘘じゃない」

「兄さんも、あの人と同じ道を行くの?」

千鶴の悲しみの眼が突き刺さる。

あの人とは親父の事だろう。

嫌う理由も解るが、親父は親父で色々と大変な目にあっているようだ。

「すまない。今のままの自分ではよくないような気がするんだ」

「私の記憶の兄さんは、危ない目に遭う方に進むよね」

「お前が誰かの嫁に行くまでは、ちゃんと帰ってくるから」

「うん」

とても、寂しげな表情を浮かべていた。

寂しくない事を伝えるために、頭を撫でてやる。

本当、俺はシスコンなんだな。

「少し、出かけてくるよ」

「うん、いってらっしゃい」

俺は家を出る。

「どこに行くかね」

実は決まってなかったりする。

家でごろごろして、体を鈍らせてはならない。

「そうだ」

龍姫に原初に近き者について聞きに行こう。

彼女も原初の物の一部を受け継いだ者だ。

はっきりとは、まだ話してもらってないからな。

「膳は急げだな」

「葉桜様!」

空中から飛び降りてきたのは、紅玉だ。

気を失った龍姫を抱えている。

紅玉は、ところどころに怪我を負っている。

「紅玉、その怪我、どうしたんだ?」

「く、私とした事が、不覚をとりまして」

その一言で紅玉が倒れた。
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