妖魔05~正道~
ビルの3階の窓を割り、内部に飛び込む。

そこにいるのは、初老の男が一人。

浮浪者のような汚らしい格好で、髭と眉毛が顔を隠すほどに長い。

「ひょひょ、まだミンチになってないのか」

「イヴァンの使いか」

「察しがいい坊だ」

周囲に黒い人影が何体も再び浮かびあがる。

「いいのか?あんたもミンチになるぜ」

「なら、やってみるとしようか?」

不味い。

目の前にいる初老は、自分に被害がないという自信があるらしい。

もう一度、調べてみる。

目の前の初老に何かおかしな部分はないか。

すると、遠くからでは確かめられなかった穴を見つける。

「あんた、実態、じゃねえのか」

魔力は存在してるし、能力も初老の物だ。

だが、そこにはいない。

初老の全てを映し出している映像に過ぎない。

本当の初老は別の場所にいるという流れなのだろう。

「ひょ、気付いたか、だが、遅い」

「どうかな」

『モード:神速』

ビルに入った瞬間に、『モード:深遠』に変えていた。

短期で決着をつけるためだったが、自分が逃げるハメになるとは思いもしなかった。

次の瞬間、時間が止まる。

目の前まで爆発が迫っている。

「く、おおおおおお」

重力のかかった体を必死に動かし、窓から飛び出る。

そして、『モード:神速』が切れるのと同時に、爆風によって吹っ飛ばされる。
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