妖魔05~正道~
「ぐ、あ」

痛みが全身を駆け抜ける。

まだ、何もしてないぞ。

黒き鎧は俺の体から腕を引き抜くと、手にはロベリアのコアが存在していた。

「姉さんが私を攻撃するわけがない。あなたは最初から負けていた」

「死んだ、はずじゃ」

俺は両膝を付いた。

まだ、息はしている。

だが、今のままでは長くない。

「姉さん、愛してる。でも、これからは、ずっと一緒だから」

ロベリアのコアを溶液に居れ、体を持ち上げた。

「待てよ」

俺は黒き鎧の腕を掴む。

腹が痛むせいで、力が入らない。

「ロベリアは、俺にとって必要なんだ」

「あなたは、姉さんを道具としてしか見ていない」

俺の腕を掴んで、家の方角に投げつける。

壁に激突し、更に痛みが増幅する。

「ごあ」

俺は、死ぬのか。

「姉さん、行こう。もう、辛い思いをしなくていいからね」

遠のく黒き鎧とロベリア。

俺は横たわりながら、眺める事しか出来ない。

何も、出来ずに死ぬ。

せっかく、蘇ったというのに。

せっかく、誰かを救うチャンスを得たというのに。
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