妖魔05~正道~
意識が遠のく。

自分では治療しようがない。

「吟、すまねえ」

お前の顔を見る事無く、俺は死ぬ。

「何をやってるだ」

霞む眼差しに、クルトが映っている。

やはり、天国の島に居たのか。

しかし、俺には余裕はなかった。

「お前、に、色々と仕事の事について教えにきたんだけど」

「余計なお世話だ」

「そうだな」

声が震えている。

「いいザマだ」

「そう、だ、な」

目が閉じていく。

「オラは知らない。オラは行くからな」

クルトが遠ざかっていく。

「そりゃ、そうか」

当たり前の事だ。

クルトは俺を治療するために近づいてきたんじゃない。

それに、治療が出来る能力を持っていないんだ。

「ああ!もう!うざったい!」

クルトが地団駄を踏むように戻ってくる。

そして、クルトが構えを取ると、能力を発動した。
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