妖魔05~正道~
カウンターの向こうにいるガスマスクの彼から漂うオーラは他の人とは違います。

「里帰りくらいはしておきたいんですよね」

「強奪を繰り返して、廃墟から出て行くお前の運の良さは凄いとしか言いようがない」

「私としては死地に辿り着ける状況に出会いたいところなんですがね。しかし、あなたの仕事熱心ぶりは誰にも負けませんね」

「給料を貰ってる。暮らしは悪くない」

「いつかあなたと死地に辿り着く勝負をしたいですね」

「中に入るのなら入れ。その代わり、ルールは守れ」

「ええ、もう一度あなたの顔を拝める事を切に願いますよ」

私達は奥へと進み、廃墟の中に立ちます。

胃の中を満たす血生臭いでご飯を食べると素晴らしい隠し味になる事は間違いないですね。

「ほんま、相変わらず嫌な場所や」

摩耶さんが鼻を押さえながら、辺りを見回しています。

「ここで成長して強くなったと思えば、素敵な場所だと思いますよ」

「パパと出会った事以外、辛い記憶しかあれへん」

「おや、良い事と悪い事の二つを見つけられるというのは、何事もよく考えているという証拠ですね」

「パパにそう言われると、辛い記憶なんか吹っ飛んでまうわ。それより、パパ、はよいこ」

「ええ、摩耶さんを見たマヤさんが驚くでしょうね」

マヤさんのお墓へと足を運ぶ途中、路地裏から豪腕の男性達が出てきます。

「おや、集団で歩いているとは珍しいですね。何か楽しい宴でも開いていたのでしょうか」

「なんか嫌な感じするわあ」

彼等は私達に気付いたようです。

「いいカモがいるな」

「おう」
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