俺様彼氏に気をつけて!?
俺は仕方なく振り向く。

「放せよ」

そう冷たく言い放って。

「ちあ、き?」

ひなは目を丸くして驚いている。

「放せって言ってんの分かんねーの?」

言いながらひなの手を振り払った。

するとひなの顔はどんどん暗くなっていく。

手は振り払われたまま固まっている。

「あの、さっきはありが――」

「目障りだ。消えろ」

お礼を言いかけたひなの言葉を容赦なく遮った。

“ありがとう”なんて言われたらどう返せばいいか分からなくなるから。

「二度と俺に関わるな。俺とお前は他人以外の何でもない」

俺は踵を返して再び歩き出す。

「待って……待ってよ!」

泣きそうな声でそう叫ぶ。

いや、もしかしたらもう泣いてるかもしれない。

「千晶ッ!!!」

それっきり、ひなは追ってこなかった。

……俺は最低だ。

あんなに優しい子を傷付けて。

その優しさに救われたくせに、自分は突き放して。

とことん最低だ。

ひな、俺はこんな奴なんだ。

だからもう忘れてくれよ。

もう、関わるなよ。

こんな奴と一緒にいたって女子に虐められるだけだ。

いいことなんて何一つないんだ。

お前にはもっといい男が沢山いるだろ?

だから……。

さよなら、ひな。

俺はお前が好きだった。

生まれて初めて好きになった女、それがお前だった。

でも俺にそんな資格ない。

ひなに追いかけてもらう資格もない。
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