★ブルーの彼方★
「夏季……このテープ……聞いちゃったの?」



 私の部屋のドアを開けて、母が言った。



母の目も潤んでる。



「うん」



 私は聞いてはいけないものを、聞いてしまったような気がした。



「そっか……



このテープはね、夏季の為にパパが残してくれたものなの。



だけどね、ちゃんとメッセージ吹き込めてなかったから、捨てて欲しいって、頼まれたの。



だから、夏季に聞かせてあげられなかった。



ごめんね。



自分の元気だった時の姿だけを、残したいからって。



だから写真も、元気だった時の姿しかないの。



夏季の誕生日まで、生きられない。



パパはそう感じたみたいで……ハッピーバースディを歌って残しておきたかった、って、言ってた……



パパは、歌がすごく上手だったから、聞かせてあげられないのがすごく残念……」
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