神風

「由那が泣いてどうすんのよ。」


いつかの飛鳥の声が聞こえた。


あれはたしか中2の時だ。


ソロのコンクールで飛鳥と戦うことになった。


1人しか予選を通過できない。


あたしは通った。


それは同時に飛鳥が通らなかったことを意味していた。


あたしが通ったから…


その時もあたしが泣いて飛鳥が慰めてくれた。


今、隣にいるのは飛鳥じゃない。


彰だ。


それに泣きたいのは彰の方。


あの時の飛鳥みたいに。
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