花を辿れば、




─白黒だった。





私の世界は、変わらずいつも白黒だった。




空も草も地面も人も建物も、桜でさえも。




確かに色が見えているのに、私にとっては無色でしかない。





色があっても、光が無いから心まで届かないのかもしれない。




でも光なんてどこにも無くて。





結局色は、消え失せていった。






「あ、の」




薄桃色の髪をした、紅の目を持つ整った顔立ちの女性。


目の前の彼女が口を開く。



総司はハッと目を見開いた。




だが、本当に驚いていたのは彼女の方だった。





─何故私は話し掛けているの?




...逃げなくちゃ。




この人、腰に刀を差しているもの。


きっと私を殺しに来たんだ。



この人の目が私を捉える前に、逃げなくちゃいけない。






けれど総司の瞳には、変わらず薄桃色が映っていて。






─その瞳に映っているのは私ですか?



そう問いたくなって、止めた。




そんなわけがないから。
きっと私の頭の上で綺麗に咲いている桜を見ているんだ。



この人も、次の瞬間には『あの目』で見てくるに違いない。






だが、その予想は大きく外れ、総司は優しい、本当に優しい目で彼女を見つめると、口を開いた。





「いきなりすみません。
えっと、感動してしまって...貴女はとても綺麗ですね。」






そう言って微笑む総司。

呆然とする彼女。




< 14 / 52 >

この作品をシェア

pagetop