大切なもの…〜cherry tree〜
 


お風呂から出ると、
妹はリビングのソファに座って
壁の染みを眺めていた。


『何しとん?』


真奈が話し掛けても、答えてくれない。


リビングで化粧をしていると、
妹が急に涙を流して言った。


「おばあちゃんが…帰って来た…」


その言葉に驚き、
真奈は持っていた鏡を落とした。


おばあちゃんは、
亡くなってもういない。


『…何言っとん?』


何度声をかけても、全く答えない。


今度は、上を見上げて


「あれって人の顔に見えるやんなぁ…?
ずっとこっち見とるねん…」


この言葉で真奈は、泣き崩れた。


寂しい思いをさせて
頭がおかしくなった。


真奈はそう思った。


この日から、
真奈はシンナーをやめて
仕事が終わればまっすぐ家に帰った。
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