才能に目覚めた少年
山本が話し始めた。





昨日のことを相談されるのだろうと思った。




なんで僕なんだろう。






辻本がいるじゃないか。




「昨日のことどう思う」




やっぱりその話だった。




「山本はどう思うの」




どうせ僕の意見なんて参考にならないだろうから山本の話を聞いた。





「俺は伊藤があんなことを考えているとは思わなかった。
正直驚いたよ。
神山は伊藤と子供の頃からの付き合いなんだろ。
あいつ、昔からあんなこと言ってたのか」





知らないよ、そんなこと…と言いたい。





「…」





僕は答えなかった。






「そうか。わかった。
俺はあいつを見直した。
普段は自由に生きているやつだと思ってたけど、世界について考えているやつだと昨日知った。
しばらくあいつを観察させてもらう」




よくわからないが、問題が解決したのはありがたい。




これで一件落着か。






「神山、お前も伊藤についていくだろ」








「やめておくよ」





あたり前だ。




僕は関わりたくない。





いくら伊藤が僕の親友であっても、面倒事には巻き込まれたくない。



「そうか。あいつと世界を変えていきたいと思わないのか」


「僕は…」






キーン…。


学校のチャイムが鳴り始めた。






僕は腕時計を見た。


しまった。


時間を確認し忘れていた。












綾瀬先生に怒られる。


掃除当番になる。


チャイムが悪夢のメロディーに聞こえた。


僕は山本の方を見た。








山本はいなかった。






屋上には僕一人しかいなかった。
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