傷跡



初日はそんな風に、何事もなくスムーズに客席を回れた。


指名も5時間働いて場内指名5本。


ずっとお客さんに指名してもらえてた。



多分新人だったから気を使ってくれたのかもしれないけど、自分の評価が目に見えて分かるようで嬉しかった。





『ねぇねぇ』




そしてその日、営業時間も終わり更衣室で着替えていると一人の女の子に初めて声をかけられた。





『名前なんて言うの?今日からだよね?』



あたしをジッと見つめたその子、そう言ってニコッと微笑んでいた。



可愛いー……。





『あ、今日からです…杏奈って言います。よろしくお願いします』


『杏奈ちゃんかぁ。あたしはルイ。よろしくね』


『はいっ!ルイさん?は、おいくつなんですか?』」




初めてルイに会った時。


そんな会話をした記憶がある。



ルイは、あたしと同じ歳で。

CLUB SEASONのナンバーワンだった。



でも全然威張ったりもしていなかったし、すごく感じのいい子だった。



そう…思ってたんだ。



< 143 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop