世界を敵にまわしても
「アンタじゃなくて、高城美月」
「何ソレ。呼ばれたいの? 変な奴」
ズバッと言い過ぎだよね。
「アンタって呼ばれるの、嫌なの」
「じゃあ、ウチのことも椿でいいから」
授業中だという事も気にせず教室のドアを開けた彼女は、やっぱり綺麗で強い人だと思った。
続いて入ってきたあたしに教室内はざわついて、クラスメイトの視線を一斉に浴びる。
「すいません、寝坊しました」
後ろのドアから数学の先生に告げると、ハッとしたように持っていた教材を置く。
「珍しいな……黒沢も、同じか」
先生にとっても意外な組み合わせだったんだろう。
学年トップのあたしよりも、奇抜な格好をする椿に視線を注いでいる。
「えー、何? どういう組み合わせ?」
「……そういや昨日さ……」
ザワザワとうるさいクラスメイトに、あたしも椿もただ突っ立って先生の言葉を待つ。
「まぁまだ開始5分だし、遅刻届はいい……座りなさい。あー、静かに、授業再開するぞ」
何だ。
意外にあっさり。
あたしと椿が前後で席に着くと、教室内は徐々に静かになった。
数学の教科書とノートを取り出して、シャーペンをカチカチと鳴らしながら、あたしはふと前に座る椿の金髪に目を止める。
……そういえば、あの楽譜を手にしてからじゃない?
変わらないと思っていた日常が、大きく変わってる。