世界を敵にまわしても


「雨降りそうだね」


綺麗になった床に満足していると、先生がそんなことを呟く。


窓の外を見ると、灰色の分厚い雲が所狭しと浮かんでいた。


同じように思っていたから特に返答もせずにいると、先生はジッと窓の外を見つめたまま動かない。


「俺、夜好きなんだよね」

「何で?」

「んー……何となく?」

何だソレ。


ははっと笑う先生につられて、呆れながらも笑ってしまう。


ふと壁に掛かる時計を見ると、部活動も終わる頃だ。


「じゃあ、片付けたし帰るね」

「うん、ありがとう。また明日」


ヒラヒラと手を振る先生に微笑んで、準備室から出る。


音楽室から廊下に出た瞬間、あたしは盛大な溜め息を吐いた。


……とんでもない日だった!


また熱くなる頬を抑えながら、早足で階段を駆け降りる。


あたしって多分、流されやすい。先生にはちょっと厳しくしないと……今日みたいな危険はもうご免だ。


今度のデートの時も、ちゃんと変装しよう。
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