世界を敵にまわしても

ぐるぐる、ぐるぐる。


出口のない場所で出口を探してる気分だ。


ここから出たいのに、抜け出せない。どうにか出たいのに、怖くて抜けだす方法を考えたくない。


泣きわめけば、先生は気付いて抱き締めてくれるのかな。


無理だと分かっているから、泣けない。


涙を流せば流すほど先生との記憶が思い出になって、消えていく気がして泣けない。


あたしが先生を愛した時間が、記憶の中で消えていきそうで。



……気持ち悪い。


食堂のざわめきも、色んな食べ物の匂いが混じった空気も。ここ1週間、ずっとこうだ。


椿といる時は何でもないのに、1人になると途端に気分が悪くなる。教室でも電車でも、家でも。


あたしは本を手に取って、椅子から立ち上がった。


椿の姿は探さなくてもすぐ目に入る。輝く金色の髪に、燃えるような赤いメッシュ。カラフルな格好を目印に、歩みを進めた。


椿は食器を下げたにも関わらず、何か売店で買っている。


……まだ食べるのか……考えただけで気持ち悪いかも。


匂いを遮断するように本を鼻にあてがうと、椿の隣に晴の姿が見えた。


晴が椿に話し掛けて、椿があたしへ指先を向けたところで視界がぐにゃりと歪む。
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