世界を敵にまわしても
「美月!?」
ガクンッと折れた膝が床について、あたしの視界には床と本と自分の手だけ。
駆け寄ってくる足音とあたしを呼ぶ声は聞こえるのに、顔を上げられない。
……頭がグラグラして気持ち悪い。
「何なにっ! 大丈夫かよ! 貧血!?」
頭上から声が聞こえて、僅かに視線を前にすると床に膝をつく男子のズボンが見えた。
ゆっくり顔を上げると、やっぱり晴の姿。眉を八の字にしてあたしを心配する男子は、この学校じゃ晴だけだから。
「具合悪い!? もしや吐きそ……わわっ!」
体が横だか斜め前にぐらつくと、慌てて晴の腕が止めてくれる。その瞬間感じた体温に、視界が潤んだ。
「ちょちょ、美月! 大丈夫っ……」
「じゃ、ねぇよ」
「うわーっ! 椿どうしよう美月が倒れた!」
「見れば分かるし、早く運べアホ晴」
2人の会話が耳に入ったけれど、どうしようもなく気持ち悪くてあたしは晴の腕の中でジッとしていた。
息苦しさまで感じていると、晴の腕に力が入ったのが分かる。
「……っ」
「動くなって!」
大丈夫と体を離そうとしても体が言うことを聞いてくれず、またぐらついたあたしは大人しくに晴の胸に頭を預けた。
その時、たくさんの人の中に見覚えのあるシルエットが視界に入る。
あ……。
先生。
あたしの声は音にならず、誰の耳にも届かないまま。
もしかしたら幻だったかなとぼんやり思いながら、意識を手放した。