世界を敵にまわしても
「ウチらと、朝霧しか知らない曲だろ。それを文化祭で、歌詞つけて、美月が歌う。その意味は他の生徒にも教員にもわからないけど、朝霧には伝わるもんがあるんじゃねぇの?」
「……」
……先生が作った曲。あたしと椿と晴を除けば、先生にしか分からない曲。
「でも……あたし歌詞とか書いたことないよ」
「ありのままでいいんだって、美月! 思うこと全部、歌詞にしてくれればいい。やり方は教えるから、なっ!」
晴に同意を求められた椿は頷いたけど、結局決めるのはあたしだ。
「やんの、やらねぇの。どっち」
椿の言葉にあたしは一度楽譜に視線を落とす。
歌えるかも分からない。緊張して声が出ないかもしれない。先生が見に来てくれるかも分からない。
だけど、何をすればいいか分からないあたしの前に、ひとつだけ出来そうなことが現れた。
「やる」
顔を上げてそう言うと、2人は顔を見合わせてからあたしに笑顔を向けてくれた。
「そうこなくっちゃなー! 大丈夫だって! 俺らもいるし、美月歌上手いって椿のお墨付きだし?」
「ウチの方が上手いけどな」
「お前のハスキーと美月の高音一緒にすんな!」
「は? ウッセーよギターバカが!」
――大丈夫、出来る。
不安だけど、怖いけど、やってみせる。