世界を敵にまわしても

「ウチらと、朝霧しか知らない曲だろ。それを文化祭で、歌詞つけて、美月が歌う。その意味は他の生徒にも教員にもわからないけど、朝霧には伝わるもんがあるんじゃねぇの?」

「……」


……先生が作った曲。あたしと椿と晴を除けば、先生にしか分からない曲。


「でも……あたし歌詞とか書いたことないよ」

「ありのままでいいんだって、美月! 思うこと全部、歌詞にしてくれればいい。やり方は教えるから、なっ!」


晴に同意を求められた椿は頷いたけど、結局決めるのはあたしだ。


「やんの、やらねぇの。どっち」


椿の言葉にあたしは一度楽譜に視線を落とす。


歌えるかも分からない。緊張して声が出ないかもしれない。先生が見に来てくれるかも分からない。


だけど、何をすればいいか分からないあたしの前に、ひとつだけ出来そうなことが現れた。



「やる」


顔を上げてそう言うと、2人は顔を見合わせてからあたしに笑顔を向けてくれた。


「そうこなくっちゃなー! 大丈夫だって! 俺らもいるし、美月歌上手いって椿のお墨付きだし?」

「ウチの方が上手いけどな」

「お前のハスキーと美月の高音一緒にすんな!」

「は? ウッセーよギターバカが!」


――大丈夫、出来る。


不安だけど、怖いけど、やってみせる。
< 431 / 551 >

この作品をシェア

pagetop