世界を敵にまわしても


「椿、ヤキモチとか妬かないの?」


椿のそんな話、普段はしないからちょっとドキドキする。


「美月にはしねぇよ」


あぁ、やっぱり分かってるんだな。あたしは椿のヤキモチラインにすら入らないのね。


「……あれ、じゃあ菊池さんは?」

「別に、普通」

「告白しないの?」


まだあんのかと言いたげな椿は足を組み直して、口の端を上げる。


「まぁ、キレてうっかり告白はしねぇから、安心しろ」

「ぎゃーー! やめて! 忘れて!」


ニヤニヤと笑う椿には、あまり晴のことは突っ込まない方がいいみたい。


あたしは軽く咳き込んで、「でも」と言う。


「お似合いだと思っ……!」

「ウチの話はもういいっつーの!」


雑誌の表紙でまさかのアッパーをくらって、若干イラッとする。


「痛いんですけど!」

「ウチのことはいいっつの! 自分はどうなんだよ」


顎の下をさするあたしを見ながら、椿は頬杖をつく。


「どうって……」

「また付き合うんだろ?」


そういえば、そういう言葉が一切なかったな。


「多分。そんな会話しなかったけど」

「何ソレ。おもしろ」


フッと可笑しそうに笑う椿に、あたしも口の端を上げた。


「椿、進展あったら教えてね」

「ハイハイ」


いつか椿から恋愛相談を受ける日を想像すると、これからも一緒に学校生活を送っていくのが楽しみになった。

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