世界を敵にまわしても


放課後になると、やっぱりこの学校は静かになる。


昼間よりグッと生徒が減って、部活に打ち込む生徒や居残ってお喋りする生徒の微かな声や音。


あたしはそれらを耳に入れながら、家庭科室やコンピューター室もあるB棟の3階、その最奥を目指した。


静かな廊下の丁度真ん中まで来て、あたしは立ち止まる。


ピッシリと閉じられた音楽室のドアが、別空間に繋がっている気がしてならない。


――明日から、先生はこの学校に戻ってくる。


また音楽の講師として。相変わらず臨時だけど、来年もいることは決定してるらしい。


つまりあたしが卒業するまでは、先生はこの学校にいるってことだ。


あたしは少しドキドキしながら、音楽室のドアに手を掛ける。


鍵は開いていた。難なく開いたドアから、懐かしい独特の匂い。


内装は何も変わってないけれど、ここに先生がいるだけで、あたしには全く別空間になる。



「……また先生と生徒に戻ったね」


ドアを閉めて、あたしはピアノの前に座る先生に微笑んだ。


――今日、先生が来ることは理事長しか知らない。


まだ噂が完全に消えたわけじゃないから、あたしと先生は前のようには逢えない。


だから1日早く、先生はこっそり内緒で来てくれたんだ。
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