世界を敵にまわしても


「ていうか……試験の話やめてください」


無駄だったと思い知らされるから。


自分がどれだけ無意味な存在か、もう分かったから。


寒気を感じて右手で二の腕を掴むと、床で朝霧先生の影が動いた。


「んー……そっか」


そう、だからもうこの話は終わり。


「俺は凄いと思ったけど、それじゃダメなの?」

「……」


お願いだからもう黙ってほしい。


あたしは静かな場所を求めて、ここに来たのに。


「ずっと1位なんて凄いじゃ――…」

「凄いって言われたいわけじゃない!」


零れる。


内に秘めていたものが、我慢していたものが。


睨みつけていた床に朝霧先生の靴が現れたけれど、視界の端から滲んでぼやけていく。



「最初からそう言えばいいのに」

「なっ! に!?」


顔を覗かれて身を引くと、いきなり顔に柔らかい物が押し当てられた。


反射的にそれを掴むと、微かに触れた朝霧先生の手が離れていく。


「泣くくらいなら、最初から言えばいいんだよ」


……ハンカチ?


白にも見える淡い水色のハンカチから朝霧先生に視線を移す。


もう何度も見た笑顔が、今日は少し違って見えた。

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