世界を敵にまわしても


ハァ、と溜め息を吐いた先生は、あたしにハンカチを差し出して宮本くんを見遣る。


「宮本、それ全部あげる」

「やった! 部の奴らにもあげよー」


宮本くんはそう言って、嬉しそうにクッキーの箱を持ち上げた。


「高城も、もう帰る時間だろ」

「え……あ、はい」


壁に掛かる時計を見ると、ここに来てから既に1時間経っている。


ハンカチを受け取ってブレザーのポケットにしまうと、朝霧先生は微笑んで再び宮本くんに声を掛けた。


「部活頑張れよ」

「おーっ頑張ってる!」

「じゃ、気を付けてね」

「行こー高城」

え、なぜ。


戸惑ってる内に宮本くんは鼻歌を歌いながら準備室を出て、あたしはチラリと朝霧先生を見る。


「……さようなら」


一応、あいさつはしとかなきゃ何となくバツが悪い。


「うん、またね」


微笑む朝霧先生を見てから、あたしは準備室を出た。


……何か、宮本くんが来てから朝霧先生の雰囲気が変わったような気がする。


笑ってるんだけど、いつもよりちょっと落ち着いてるっていうか。……そもそも朝霧先生のいつも通りってどんなのか分かんないけど。


あたしの中では、2人の時と宮本くんが居た時では少し違った。と、思う。


やっぱりあたしって、からかわれてるのかも。


……それはそれで腹立つな。


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