世界を敵にまわしても


「あー、体育のせいで体ダルいぃ~」


あっという間に放課後になり、帰りのホームルームも朝霧先生が来ていた。


あたしは部活前のミキ達と教室の後ろで少し立ち話。


本当はさっさと音楽室に行きたいんだけど、流れ的にそうもいかないのはいつもの事。


「てか1年の指導がダルイ」

「えー、可愛いじゃんっ」


サトミとユイがそんな話をしてると、ミキが「そろそろ行かなきゃ」と眉を下げる。


「ミキんとこは1年指導あんの?」

「んー、でも少ないしねぇ~」


廊下に出る3人の後に続くと、まだもう少し立ち話は続くらしい。


ふと教室の中を覗くと、黒沢さんがドアに向かってくるところだった。


……あ。


目が合って、教室から出てきた黒沢さんにミキ達が黙る。


廊下を歩く彼女の後ろ姿を見て綺麗だと思うのは、あたしだけじゃないと思うんだけど。


「……黒沢さんって、どういう人なんだろ」


前はブルーで、今日はグレーのカラコンだった。


「は? 何言ってんの美月、あのまんまでしょ」

「……誰かと話してるの、見た事なくない?」

「ダメだよ美月っ! 関わってもロクなことないってぇ~」


サトミとミキの言葉にも、同意するように頷くユイにも、思いっきり首を傾げたい。


ただ、どういう人なんだろうって話だったのに。
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