世界を敵にまわしても
「何なに、黒沢の話~?」
突然背後から菊池さんに話し掛けられて驚いた。あたしじゃなくて、ミキ達が。
「あ、何か美月がさぁー、どういう人なんだろうって」
押し付けられたっぽい。
サトミの言葉に菊池さんは「ふーん?」と言ってあたしの前に顔を出す。
気付けばAランクの女子達まで廊下に出てる不思議な光景。
「黒沢に興味あんの?」
まるであたしが黒沢さんの肩を持つのか、品定めするような目つきを向けられる。
「普段何してんだろってくらいは、思わない?」
逆に質問し返すと、菊池さんはジッとあたしを見て鼻で笑った。
「アレじゃない? ちょっとイケないバイトしてますー的なぁ」
「うっわ! 有り得るー!」
……ゴメン黒沢さん。墓穴掘ったかも。
「まぁいいじゃん黒沢なんて。サトミらは部活ー? 頑張ってねー」
「うん、じゃあね」
「バーイ」
「バイバーイ」
菊池さん達ちを見送って溜め息をつくと、ユイに「もーっ!」と怒られた。
「ウチ等が溜め息つきたいよ!」
あたしの溜め息は安堵じゃなくて、呆れからきたものなんだけど……。
「ごめん、気を付ける」
ミキ達の気持ちが分からないわけじゃないから、一応謝っておく。
その後すぐに3人と別れて、あたしは音楽室へ向かった。