世界を敵にまわしても
「答えなくても、ヒーローなら分かるんじゃないんですか」
「フハッ! いつの間に俺はそんな凄い人間になったの」
可笑しそうに笑う先生はあたしを見てから、先程の質問に答える。
「俺は何かしたいわけじゃないよ。高城と、ただ話してるだけ。でしょ?」
「……」
成績表を持って家まで来た人が何言ってるんだろうと思ったけど、それは心の中に留めておいた。
とりあえず今は、その優しさを受け入れるだけにしとこうと思う。
ドアに寄り掛からせていた体を起こして、あたしは真っ直ぐ先生を見つめた。
少し、鼓動を早めながら。
「話してるだけで分かりますか?」
「何を?」
「先生のこと」
先生が話してるだけで、あたしの家族に対する悩みが分かったみたいに。あたしも話してるだけで、少しでも先生のことが分かる?
先生は一瞬だけ目を丸くして、すぐに微笑んできた。
「会話は1番、人と人の距離を近付けさせると思うよ」
「話した分だけ?」
「うん。を出してる自分だったら、の話だけどね?」
ここでそういう事言っちゃうんだ。
ニヤッと口の端を上げた先生に何の返事もせずに居ると、案の定笑いだす先生。
「ははっ! 今、イラッとしたでしょ! 顔に出てたよ……っ」
「今もイラッとしましたけど、何ですか、ダメなんですか」
素の自分で接しないと、先生とは近付けないんでしょ。