CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=


と言う訳で、俺達は新星MUSICを後にして、本郷スタジオに向かった。


中に入ると、本堂さんが暇そうに音楽雑誌を読んでいた。


「どうも、こんにちは!

本堂さん、どうしたんですか?

ずいぶん暇そうですね!?」


『ん!?

あぁ、チャンスか!

今日はスタジオの予約も無いし、お客は0だ!

ライブハウスも今日は閉めてるから、退屈でしょうがないよ。

今日は、お前達が最初の客だよ。』


「ひどいですね!

やっぱりこの時期は皆忙しいのかなぁ?」


『週末なら、もう少し忙しいんだけどなぁ。』


「大学の直ぐ近くに在っても、学生達は勉強ばっかりしてるしなぁ。」


『まぁ、どうにかなるだろ!

チャンス達も、知り合いのバンド仲間にちょっとは宣伝してくれよ!』


「わかりました。

頑張ってみます。

今日はスタジオお借りします。」


『練習か!?』


「今度、24日にライブやることになったんで、シュミレーションを兼ねての練習なんです。」


『そっかぁ。

見ててやろうか!?』


「良いんですか?

是非お願いします。」


『じゃあ、ピアノの有る部屋が良いんだね!?』


「はい、お願いします。」


『今日は有料な!

不景気だから。』


「勿論です。

いつもタダではアボジ(親父)に叱られますから。」


『とりあえず、何時間なるか分かんないから、後でな。


天道、カウンター頼むよ。』


と言うと、俺達と一緒に3階のルームに向かった。


俺達は、ライブのタイムスケジュールを渡して、曲のつながりをチェックしてもらった。


ヘビメタ第九は、ジョージしか知らないので、キーボードだけで演奏して貰い、Get achance,get a rhythmに移行していく感じを掴んでいった。


ストップウォッチを握った本堂さんが、タイムスケジュールに色々と書きこんでいる。


『森本君、もう一度第九を弾いてくれ。

他のメンバーは、キーボードに合わせて見ろよ。

さっき聴いたから、だいたい分かるだろう。』


「本堂さん、そんな無茶な!」


『お前達プロのミュージシャンだろ!

一回聴いたら、覚えておけよ。

で、覚えたメロディーラインに、自分のパートの音を頭でイメージして、即興でセッション出来なきゃ、これからのステージで苦労するぞ!』
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