CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「そりゃ大変な作業なんでしょうね!」
『大変だったよ!
毎日、暑い中測量士が5日間も掛けて測量して、それを金光住建の一級建築士が設計し直して、ようやく工事も再スタートしたんたよ。
その上、工事費はうちの社長が余裕が出来てからで良いからって言ってくれたそうだよ。』
「金光の伯父さん、太っ腹なんだなぁ。」
『まぁ、金には困って無い人だからな。』
「それでエレベーターが1つになったのはどうしてですか?」
『どう考えても、必要性が無かったからだよ。』
「ですよね!」
『だから、工事の申請も新しい図面でやり直しているから、問題は無いんだよ。
社長が、間違えて古い図面を渡してしまっただけの話だよ。』
「ですねぇ。
でも、おかげで色々とお話が聞けて良かったですよ!」
『じゃあ、この図面を水谷工務店の人に渡してあげて下さい。
これはコピーだから、返さなくても良いからね。』
「分かりました。
ありがとうございます。」
『じゃあ、頑張ってな!
それはそうと、高校時代には、良くここのスタジオに遊びに来てくれてたのに、大学生になってから本郷スタジオばっかりだね。
たまには、こっちのスタジオも使ってよ!
夜になったら、この辺は楽しいところが沢山在るから、今度連れて行ってあげるからな。』
「見つかったらヤバいでしょう。
それに、彼女は裏切れませんし。」
『そっかぁ。
相変わらず、真面目なんだね。
ホントに社長の息子なんだろうか!?
社長の遊び方は凄いからなぁ。』
「相変わらず、無駄遣いばっかしてるんでしょう!?」
『いいや、うちの社長は無駄遣いは余りしないよ。
社長は生きた金の使い方ををしてるよ。
見た目は、無駄遣いに見えても、後々にそれが生きてくるんだから、凄い人だよ。
だから、困っていても、必ず誰かが助けてくれるし、ドブに捨てた様に見えるお金が、新しいお金を生み出してくれているんだよ!
例えば、騙し盗られたお金は、もちろん損失だけど、それがあったから、今は金光社長との太いパイプが出来ているし、信用とか信頼も生まれているだろ。』
「そっかぁ。
そう言う考え方も出来るし、必要なんだなぁ。
1を無くして10を得るって言う事ですね。
確かに言う通りです。
今日は勉強に成りました。」