CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



「ありがとう…。」


って言いながら、俺の渡したハンカチで涙を拭きはじめた。


「ママは、さっきまでここに座っていたんだね!?」


『うん…。』


「お兄ちゃんが来たときには、誰もいなかったから、きっとミヤビちゃんを探しに行ったんじゃないかなぁ。

ママは、どんな恰好しているか憶えているかな!?」


『……、あのね~……、お花がいっぱいの着てた。

んとね~ぇ……、黒いのヒラヒラはいてたよ。』


「じゃあ、一緒に探しにいこっか!」


と言って、手を差し出すと、彼女の小さな手が、恐る恐る握ってきた。


彼女の小さな手から、彼女の想いが流れ込んで来るみたいに、俺のこころをザワつかせた。


その瞬間、物凄い頭の痛みを感じて、おもわずベンチシートに尻餅をつくように、再び座り込んで仕舞った。


……、今のは何だったんだ‥‥‥‥。


いきなり彼女の感情が流れ込んで来たみたいだ!


『お兄ちゃん、ダイジョブ?』


「あぁ!

大丈夫だよ!」


大丈夫なんかじゃないが、ニコッて笑ってミヤビちゃんの手を、もう一度握った。


もう何とも無い!


「じゃあ、最初はミヤビちゃんがいたところまで連れて行ってくれるかな?」


『良いよ!

行こ。』


待合室から出て、俺とミヤビちゃんでエスカレーターの横に在るTVのところにやって来た。


しかし、彼女の言うような、花柄の服を着ている女性は見当たらなかった。


「ミヤビちゃんは、ずっとここにいたのかい?」


『うんん。

ちがうよ。

あっちの椅子に座って、お外の飛行機を見ていたの。』


「じゃあ、行ってみようか。」


『うん!』


再び、彼女の手を握り、飛行機が見えるところまでやって来た。


「ここに座ってたのかい?」


『そうだよ。

でね、あっちの大きな飛行機が飛ぶのを見ていたの。

でもね、全然飛ばないから、つまらなくなっちゃったの。

んでね、ママが居るところに戻ってみたら、いなかったの。』


ヤバい!

また、泣きそうになってきた。


安心させてあげようと、彼女の小さな頭を撫でてあげた瞬間、俺の知らないはずの彼女のママの顔が頭の中に流れ込んできた。


待合室で座って、雑誌を読んでいる場面が…。


しかし、その待合室は構内の真ん中に在る待合室じゃ無かった。




 
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