CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



俺に見えたのは、外の滑走路が見える、南側の待合室だ!


さっきミヤビちゃんと居たのは北側の待合室。


と言う事は、ミヤビちゃんは勘違いで、北側の待合室に来たんだ。


でも待てよ‥‥‥。


何でそんなのが見えたんだ‥‥‥‥。


気のせいか!?


とにかく行ってみるか!


「ミヤビちゃん、今度はあっちの方を見てみようね。」


『うん!』


再び、手を繋いで俺達は南側の待合室へ向かった。


直ぐに、ガラス張りの待合室の外をキョロキョロと見渡している、花柄のブラウスを着た、30才くらいの女性が目についた。


「あの人がママだよね!?」


『うん!』


と言って、俺の手をグイグイ引っ張りながら、母親の元に行こうとしている。


俺も、彼女と一緒になって、母親の方へと歩みを進めた。


『ミヤビちゃん~!』


『ママ~!』


『探したのよ!

どこに行ってたの?』


『動く階段みてたの。

でね、飛行機もみてね…、ママが居なくなっちゃった…。』


また泣き出しちゃったよ!


でも、今度はママに会えたから嬉し泣きだよね!


暫くの間、親子で話していたが、おもむろに母親が俺の方へと視線を向けた。


俺は、とりあえず軽くお辞儀をしてから、口を開いた。


「初めまして。

ミヤビちゃんが迷子になってたから、一緒に探してました。」


『ママ、このお兄ちゃんがね、ミヤビと一緒にママを探してくれたんだよ。』


「とにかく、見つかって良かったです。

そろそろフライトの時間が迫っていますので、ここで失礼します。」


『本当に有り難うございました。』


「どう致しまして。」


『あの~、お名前はなんて…。』


「お兄ちゃんで良いですので。

それじゃあ、ミヤビちゃん、バイバイ!」


『ありがとう…、お兄ちゃん!

バイバ~イ!』


「じゃあね!

ちゃんとママと、しっかり手を繋いでおくんだよ。」


『ハ~イ!』


と言いながら、右手をママとしっかり繋いで、左手で力一杯振って、何度も何度も《バイバ~イ》って言ってる。


こっちも、振り返ってもう一度手を振って、ニコッと微笑んで、大韓航空の搭乗口へと向かっていった。


機内に入ると、キャビンアテンダントの女性が、ボーディングパスを確認して、ファーストクラスに案内された。

 
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