自由のギフト

泣き止んだ、ノカの鼻は真っ赤だった。少し向こうに先程の二人が座り込んでいる。
涙と鼻水を袖でぬぐってやる。
あっちの二人の様子も気になるけど、僕はそのまま帰る事にした。
これ以上ノカに怖い思いをさせたくなかった。
「よし、帰ろ。お菓子買って。お昼買って。帰ろ。」
僕は勢いをつけて立ち上がると、ノカの手を握る。
ノカは鼻を赤くしたまま「チョコかな。」と二部咲きの笑顔で言った。
僕等は路地をでて元来た道に戻る、わざと僕は明るく振り撒き、繋いだ手を大きく揺らす、ノカもだんだんと、つられて楽しそうに笑いはじめた。
立ち直るのが早くてよかったと気持ちが軽くなりはじめた最中ノカが後ろを指差した。
鼻をティッシュでおさえる少年とさっき地面に突き飛ばされた少女だった、僕は隣の少年をどうやら女性だと勘違いしていたらしい、長い髪に華奢な体つき小さいかお、下の制服がズボンだから、今は男と判断するが、スカートでもおかしくないくらい。
二人は僕等が気付いて足を止めると小走りで近寄ってきた。 「あの、さっきはありがとうございました。」
言ったのは女の子の方で男の子の方は鼻にティッシュをあて、視線もあわせず、申し訳なさそうに頭を下げる。
どうやら鼻血をだしているみたいで、ティッシュには血が滲んでいる。
所々に血の跡や泥なのか埃なのか制服は酷い有様だった。
女の子もさっき突き飛ばされた時の傷か膝から血が流れて赤黒くなっている、ほっぺも赤く腫れていた。
「いや、それより大丈夫？血でてるよ。」
「このくらい大丈夫です。ありがとうございました。」
もう一度彼女は礼をし男の子のほうも頭を下げる。
僕も反射的に頭を軽く下げてしまう。
そして彼女達は振り返り行こうとするとノカが彼女の手を掴んで 引き止めた。
「お家にバンソコあるよ。」
正直僕はこれ以上関わりたくなかった。
たしかに彼女達の様子は気にはなるが、そんな事いちいちかまっていても、しょうがない。
僕に返事を求め、顔を見つめるノカ、それに目で「勘弁してくれと」訴える僕。