自由のギフト

イチゴを一番最初に一口で頬張るノカ、それを見てあゆみがほっぺをつつく。
｢このケーキ、たかしが始めたバイト先のなんです。｣
｢あぁ、さっき言ってたね、ケーキ屋さんで働いてるんだ。｣
｢はい、周りは女の人ばかりなんですけど、楽しそうに働いていました。｣
自分の事のように明るく答えるあゆみ。
｢何だか、親に打ち明けて開き直ったみたいです、女である事を隠さなくなったんです。
逆にそれが良かったみたいで周りの人とも上手くやってるしたかしは見違えるように明るくなりました。｣
｢それじゃ、親御さんも理解してくれたの？｣
大家さんはまだケーキに手をつけていない。
｢いえ、ダメだったみたいで。
予想した通りに悩んでしまったみたいです。
でもたかしも覚悟はしていましたから・・・。｣
手に持ったフォークを見つめ少し淋し気な視線が時間をつくる。
僕はケーキを飲み込み、大家さんの入れてくれたお茶で流し込んだ。
大家さんは黙ってあゆみを見つめている。
様子を伺うように僕は声をかけた。
｢どうした？｣
｢だから、だから家を出るって、もう学校にも通ってません。
一人でちゅんと暮らして親を安心させるって、今は目標があるから余計な事考えないで働くって。｣
そこまで言うと再びあゆみに笑顔がもどりだした。
｢結果的には良かったんです、私ももう頑張る必要がないし、ちょっと淋しいけど最近のたかしは生き生きしはじめた、それにそんなに遠くに行くみたいじゃないし。｣
｢近くに借りるんだ｣
｢多分・・・そんなこと言ってました。｣
｢あゆみちゃんは 大丈夫？｣
優しい静かな声で大家さんが聞いた。
それだけであゆみも意味が伝わったみたいで軽く｢ウン｣とうなずいて笑顔をつくる。