自由のギフト
ノカとの生活にもう少し馴れ、大家さんがカボチャの煮付けを頻繁に持って来るようになる頃、僕の部屋にあゆみが一人で訪れた。
手にさげた袋には白い四角い箱が透けている。
「この間はどうもありがとうごさいました。」
頭を下げるあゆみ、相変わらず礼儀正しい。
「それはもういいから、久しぶりだね。
今日は彼は、一緒じゃないの?」
言ってから彼女の方がよかったかなと思った。
「はい、バイト始めたんです。それで先に私が報告にきました。よかったらこれ、大家さんとこで一緒にたべまながらどうですか?」
あゆみはそう言って白い袋を持ち上げる。
いつのまにかノカが僕の隣に立って袋を見つめていた。
「ケーキだよぉ、ノカちゃんケーキ好き?」
「うん、イチゴのケーキ?」
「イチゴもあるよぉ、それじゃ先一緒に大家さんとこ行こうか。」
「うん。」
それじゃと僕に目配せし、靴をつっかけたノカの手を引いて先に向かった。
電気を消して戸締まりをしてから僕もすぐ下の階の大家さんの部屋へと向かった。
「温井でぇす!」
ノックするとすぐにドアが開き大家さんが向かえてくれた。
「お茶入れるから先座ってて。」
中には四角いテーブルの一辺にノカとあゆみがくっつき合うように座っていた。
僕も向かい合う正面の席に腰を下ろした。
ノカのはしゃいだ顔を見てから、あゆみに視線を移す。
制服を着ていないからなのか、この間より大人っぽくみえる。
それに穏やかで柔らかい感じをかもしだしていた。
この前は顔も腫らしていたし、殺伐とした空気が全体をつつんでいて、気の強さだけが全面に表れていた。
きっとこちらが本当の姿なんだろう、モテるんだろうなと一人で思った。
「お待たせしました。さぁいただきましょう。」
各自の前に皿とフォークと湯気のでている緑茶が置かれ、あゆみがケーキの入った箱を開ける。
ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブランにチーズケーキ僕はモンブランを選びノカと大家さんはショートケーキ、あゆみはチーズケーキケーキを選んだ。
「あとでノカちゃん持って帰ってね。」
残ったケーキを箱ごと大家さんはそう言って冷蔵庫にしまう。
みんな席に着くと早速「いただきます」をした。


< 19 / 24 >

この作品をシェア

pagetop