自由のギフト
テレビの子供番組は終了し報道番組がながれだした。
僕はノカがこちらを見ている事に気付かず、繰り返し手紙を読み返す。
「ねぇねぇ、何度も読んでも、間違いなくタチカ宛てだよ。」
呼び捨てである。
まだ出会って一時間もたっていないのに、目の前の小さなノカと名乗る少女はもう慣れはじめている。
「ん~、確かにそうなんだけど、とにかく何か手掛かりはないかと。」
「手掛かり?」
「おっテレビ終わったんだね、家の住所とか連絡先とかわからない?」
「うん。」
満面の笑顔で頷かれる。
とにかく警察に届けるべきなのか、イヤ、考える必要なんて全くない警察に任せればそれですむじゃないか。
「なんだ」
「なにが、なんだなの?」
「いや探し物はプロに任せればいい。君のお家もママも探してもらおう。」
僕がそういって、ポケットから携帯を取り出すと、平然と僕の前を横ぎりノカは引き出しから僕の貯金通帳を探しだして、僕に手渡した。
「お手紙に書いてあったでしょ。」
手渡された通帳を見て僕は唖然とする、残高752円の下の欄に今まで見た事のない数の0が並んでいた。
振込み先には機械的な文字で『ママ』ときちんと記されいる。
「なにこれ?」
「だからお手紙に書いてあったでしょ。」携帯は滑るように手元から落ちて行き、再び手元にある手紙を読み返す。
・・・あなたの口座に振り込む・・・確かに記されている。
「お仕事、辞めるんだから、ちょうどいいでしょ就職したとおもえば。」
「なんで、知ってるの辞める事?」
ノカは玄関に散らばっている求人誌を指さす。
「でも、どうしても嫌なら一人でかえる、それに人にたのんだら怒られるよ。」
玄関から通帳と手紙に再び目を移す。
「一人でなんか無理だよ、住所も言えないんだよ、それになんで怒られるの?」
「だって子供だもん。」
「見ればわかるよ。」
「違うってば、タチカの子供って事。」


「え!」


勢いよく彼女にふりむく。
両手で耳を抑えるノカ。
「うるさぁい!だから自分の子供のお家を探してもらうなんて変でしょ。ここなんだから。」

僕は目が点になりながら、追いついてこない頭を必死にせかせた。
「子供・・・。」
「そうだよ。」
身に覚えがまったくないわけじゃない、けれどそんなはずは・・・。
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