自由のギフト
心ここにあらず。
フルパワーで脳みそをうごかす。
過去の記憶を走馬灯のように振り返る。
あんな事・・・こんな事・・・楽しかったなぁ・・・辛かったなぁ・・・・いろんな事あったなぁ・・・・・・・・・・・・・・・
「!タチカ!タチカ!」
頭を両手で非力に揺さぶられ現実に戻される、目の前にはノカの顔が距離1センチのところで僕の目を覗き込んでいた。
「寝ちゃったかと思った。」
優しくノカを持ち上げて距離をつくる。
なんで子供はいつもこんなに距離が近いんだろう、ふいにそんな事を感じながら、頭は逆に冷静になっていった。
「僕の子供なの。」
小さな肩に手を置いて、小さな顔のちいさな目を見つめる。
「そうだよ、そういう事になってるから。」
なんだかそのおませな話し方にも愛らしさを急に感じはじめた。
「そういう事にしてあるから、みんなに説明しなくても大丈夫って、お手紙にも書いてあるでしょ。」
確かに書いてあったような、・・・説明する必要はないと。
ホッと胸を撫で下ろす反面、いい表せない、もやもやしたものが僕の中に残った、もしかしたらの親心?芽生えたか?
「ん~とにかくそれも確認しよう、ついでにコンビニにもいくから。
一緒に行く?」
「行く!」
元気よく彼女の返事が帰ってくる。
僕はこのキツネにつままれたような状況が実際、現実に起きている事なのか確認するべく外にでる。
まずは下の階の大家さんに彼女をみして見よう、部屋の鍵をちゃんと閉めた事を確認する。
「下のおばあちゃんとこ最初にいくよ。」
「はい!」
素直に返事をした後小さな手が当たり前のように僕の手を握ってくる、その小さな手に新鮮なときめきを感じ、優しく握りかえした。
こんなんもいいかも。
「手ちいさいね。」
「子供だからね。」
あらら、苦笑い。
手をつないだまま階段を下り、そのまま大家さんの部屋の前。
僕の事をなにかと世話をやいてくれる大家さんは僕の部屋の真下に住んでいた。歳は孫くらい離れていて、近くに身内のいない僕には最も頼りになり、ゆいつ甘えられる存在だった。
「ノカが押す。」
部屋の前につくと手を引っ張り訴える。
どうやらインターホンを押したいらしく、僕は彼女を持ち上げた。

ピンッ ポーン
ピンッ ポーン

ピンッ ポーン





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