自由のギフト
仕事帰りに寄ったコンビニのATMの前。
三回目の10万円。
明細書の残高の数字は変わらずにお金だけが手元に残る。
僕は悪い事をしている様な感覚を覚えた。
備え付けの封筒に引き出した30万円を入れポケットにしまう、夕食とお菓子のお金は自分の財布から出した。
引き出したお金を使うのはとても後ろめたく感じたからだ。

その帰り道。
「ねえ、ノカちゃんこれは夢の中なの」
繋がれた小さな手の存在を確かめた。
確かに僕の手のなかには暖かく柔らかいものが存在する。
「そ う か もねぇ~。」
やたらリズミカルな返事。
散歩するみたくゆっくりゆっくり歩く、繋いだ手は前へ後ろへ揺れながら。
確かに彼女は存在する。
片手にはコンビニ袋、もう一方はノカと手を繋いでいる。
目の前に起きている事を考える。
答えは当然でないまま家に戻ってきてしまった。
夕食をすませ、少しお菓子を食べ、風呂に入り、ひとつしかないベッドはノカに譲り、僕は押し入れから取り出した寝袋で眠った。
こっちに出てきたばかりの頃、しばらくはそれを布団がわりにして寝ていた。
家を出ることを決めたとき、布団でわなく寝袋を購入して僕はこのアパートにやってきた。
なぜ?さぁなんでだったっけ?
そのあと結局ベッドを買ったんだけど。
はじめ寝袋にはノカが寝ていた、寝袋がいいってきかなかった。
子供ってこういう物好きだよね。
しかし二時間ほどでベッドに横になっている僕をおこしにやってきた、僕は寝付けづ明かりの消えた部屋で目を開けたままこれからの事を考えていた。
ノカはどうやら寝袋が暑かったみたいだった。
僕と場所を変わってからもすぐに掛け布団を剥がしてしまう。
それに気づく度僕は布団をかけ直していた。


彼女と出会ってから、まだほんの数時間しかたっていない。
女性なら母性って言うのだろうかこの気持ちは、僕の中には確実に彼女の事を守らなければいけないって使命感が存在していた。
自分の子でもない、まして数時間前にはじめてあったにもかかわらずに。
彼女の寝顔を見つめながら「とんだお人よしだ」と少し温かい気持ちで目を閉じて、眠りについた。
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