自由のギフト
「押しすぎだから。
すいませ~ん!上の温井です!。」
いたずらでわない事を大声でアピールし、ほっとくとこのままずっとボタンを押し続ける勢いの彼女を下に下ろし大家さんをまつ、彼女はどうにかボタンを押そうとジャンプしたり、背伸びしたりと微笑ましい姿をみせた後、しかめっつらで僕を睨む。
気付かないふりで僕はそのまま大家さんをまった。

「はい、はい、ちょっとお待ち下さい。」
ドアに遮られた声がすると同時に鍵を開ける音、 ドアが開く。
「すいません、この子が急に。」
ドキドキしながら大家さんの反応を窺う、頭の中で適当な言い訳を考えながら、しかし大家さんは僕に一目したあと、しゃがんでノカと視線を合わせた。
「どうしたの、ノカちゃん?」
「えーとね、パパとお散歩行くからおばあちゃんに行ってきますを言いにきたの。」
「それは、わざわざありがとう。気をつけて行ってらっしゃい。」
「うん!いってきます。」
なぜかそこでノカはお辞儀をする。
大家さんはとても優しい顔をしていた。
僕の手を引き歩き出そうとするノカを制止て苦笑いで頭を下げる、そして小さくすいませんとつぶやいた。
「いいえ、可愛い小さな訪問者はいつでも大歓迎だよ。」
そう言うとノカに手を振る、ノカもバイバイと言いながら手をふりかえす。
僕はもう一度頭を下げて、手を引っ張るノカに続こうと振り向くが思い直し再び手を振る大家さんの前に引き返す。
非力なノカは全力で地面踏みしめ前に進もうとするがズルズルと地面を滑っている、滑り出すと今度はそれが面白いとみてわざと踏み出した足を滑らせ遊びはじめた。
きっと今僕が手を離せば顔から地面にダイブするだろう。
引き返してきた僕にどうしたのって顔をする大家さん
「この子、僕の子ですよね。」
二人の間に嫌な空気が流れる、そして怒ったように言われた。
「なぁにをいってんの、当たり前でしょ」
「そうですよね、
ハハハ、じゃあいってきます。」
笑ってごまかす。
「はい!いってらっしゃい!」

「温井君なにかあったらいつでも来ていいからね、たまには暇な年寄りの話し相手になっておくれ」
歩き出した僕達の後ろ姿に優しい顔して、言葉を投げかける大家さん。
僕は軽く頭を下げて答えた。
気を使わせ、優しさを使わせ、胸が痛むのを感じながら僕らは歩き出した。
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