レモンドロップス。
―――ガラガラッ
「せんせ~、竹村先生いますかあ~?」
冷房があまり効いていないのか、埃っぽい社会科準備室からはモワッとするような空気が押し寄せた。
社会科準備室は授業で使う教材や本が置いてある、社会科教員の専用部屋。
健にぃの部屋だった。
夏休みの学校は、部活に励む生徒が出入りしていて案外にぎやかだ。
あたしは吹奏楽部の練習の合間に健にぃの部屋にやってきた。
伝えたいことがあったから。
「た・け・む・ら・せ・ん・せ~」
シンとした部屋を進んで、ひょいと本棚の影を覗くと
「うおおおっ!」
「きゃあっ!」
本棚の下にかがみこんでいた健にぃが大声を出すからあたしも思わず悲鳴を上げた。
「なんだよ、彩香か~。びっくりするじゃねえか!」
「先生こそ、大きい声出さないでよ!心臓止まるかと思った~」
健にぃはひざの埃を払って立ち上がると、
「まあ、座れよ。麦茶飲むか?」
「あ!あのね。あたし先生に話したいことがあるの」
健にぃは窓を背にして、ゆっくり振り向いた。