レモンドロップス。

いつの間にか、あたしたちはコスモス畑の中に立っていた。

見渡す限り、薄ピンク色のコスモスだ。


「すごい・・・」

呼吸するのも忘れるくらい、あたしは夢中でその花たちを眺めた。


そこは田んぼの中にぽっかりと浮かんだピンク色の海。

あたしと陽斗は手をつないで、その海にただよっている。



「これを彩香に見せたくて。ここは田んぼの中にあって目立たない穴場のコスモス畑なんだよ」

静かに陽斗は言った。


「すごいね、あたしこんなの初めて見た・・・」

「彩香、前に言ってただろ。桜とか、ピンク色の花が好きだって。だから・・・」

またちょっと照れたように陽斗は鼻をすすった。

そういえば、前にいずみちゃんも交えてそんな話したような・・・。


「それ、ずっと覚えてくれてたの?」

「まあこの季節に桜は無理だけど、代わりに秋の桜、コスモスってことで探してみた」


そうだったね、あたしは桜の花が好き。

甘くて、消えそうなくらい淡い色の花が大好き。

覚えててくれたんだ・・・、あたしたちが始まった季節の花の色。


「プレゼントなんて偉そうに言えるもんじゃないけど・・・」


「そんなことない!ホントに、ホントに嬉しいよ」

夢中でそう言うと、陽斗はあたしの頬に手を置いて、

「誕生日おめでとう」

そう言うと、そっとあたしに口づけた。


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