レモンドロップス。
あたしはドキッとして乾くんを見た。
「・・・て言っても、陽斗が戻ってくるまでの間だよ?もちろん練習は続けるけどね。とりあえず、ライブ活動は休む。陽斗以外のボーカルは考えられない、というのが俺たちの今の答え。」
不安そうなあたしの気持ちをほぐすように、乾くんは明るいトーンで決意を語った。
でもその言葉の端々に、陽斗への、陽風への強い思いを感じて胸が熱くなる。
「そこまで思ってくれる仲間がいるなんて、素敵だね。陽風が復活するの、あたしも待ってるよ。」
おばあさんの話によると、陽斗の声が出ない症状は一時的みたいだし、きっと遠くない未来に陽風はステージに戻ってくるはず・・・。
「でも、陽斗の気持ちはどうなんだろう?」
「え?」
乾くんは意外な言葉をつぶやいた。
「俺、昨日病院に行ったんだけど、その時ギターケース担いで行ったんだ。で、陽斗の病室に入ったとき、あいつスウッっと一瞬俺から目をそらした。」
それがどういうことを意味するのか、あたしには最初ピンと来なかった。
「なんか、俺の姿見たくないのかなって思っちゃったんだよね。音楽を連想させたからかな。」
「それってもしかして・・・陽斗は音楽を離れたがっているってこと?」
乾くんはうーんとうなって、
「それは分からないけど、なんか今は見ていたくないんじゃないかって気がした。目をそらしたい気持ちなのかな」
陽斗の異変を感じたのはそれが最初だった。
無事だったことは嬉しいけど、陽斗の心はどう変わっていくんだろう。
小さな不安のとげが、チクリとあたしを刺すのをはっきりと感じていた。