レモンドロップス。
「あたしも、悔しいよ・・・。陽斗、最近ホントに夢に向かって頑張ってたように見えたから。不安もあったみたいだけど、自分の思いを信じてここまでやってきたんだもん。」
最近、あたしの涙腺は壊れ気味。
自分の言葉にまで反応してあふれそうになる。
「分かるよ。おれもずっとあいつを見てきたから。俺が陽斗を音楽の道に引っ張り込んだ張本人だって知ってた?」
乾くんは、わざとあたしの目を見ないでたずねた。
その気遣いがとてもありがたい。
「そ、それはあんまり聞いてない。」
「あいつが俺の家の近所に引っ越してきたのは小学校に入る前、5歳くらいだったっけ。幼稚園ですぐに仲良くなった。」
乾くんは懐かしそうに言った。
「あいつのお母さんが亡くなってからもそれは変わらなくて、兄貴とかその友達とか一緒になって遊んでたんだ。俺たちが中学生に入る頃、兄貴がバンドを始めて・・・。」
「その時、陽斗を誘ったの?」
「兄貴のバンド、ボーカルが最初いなくて。俺は陽斗の声がすごくバンドに合うんじゃないかと思って、あいつを推薦したの。」
浩一郎さんは、すぐに陽斗の声を気に入って、バンドに誘って楽器や曲作りとかあれこれ教えたそうだ。
「俺もあいつもすぐに音楽に夢中になった。それからバンドを本格的にやることになって、陽風を結成したんだ。」
バンド名をあんまり教えたがらなかった陽斗。
自分の名前が入っているのを恥ずかしがってるみたいでおかしかったことをふと、思い出した。
「陽風って、やっぱり陽斗の名前からとったの?」
乾くんはニヤッと笑って。
「そうそう、兄貴が一方的に決めてさ、陽斗けっこう嫌がってたな~。でも俺も透さんも大賛成したよ。だって、あいつの存在が俺たちの音楽の中心だったから。」
その言葉は、ブーメランのように乾くん自身に戻ってきて突き刺さったようだった。
一瞬の沈黙が、あたしたちの間に落ちる。
「陽風は、当分活動休止する。」