レモンドロップス。

翌日の昼休み、藁にもすがる思いで菜美に夕べの出来事を打ち明けた。


「戸田くん、ホントにそんなことを?」

あたしがうなずくと、菜美は信じられないと言うように首をかしげた。

「今までの陽斗とは別人みたいに見えたよ。大声出して、暴れたり・・・」

「やっぱり左腕のことがショックだったのかな。ギターも、もう弾けないんだよね・・・?」

菜美は、あたしを気遣うように恐る恐るたずねた。

「それは・・・まだ分からないけど。でもやっぱり、夢が途切れたって気持ちが強いみたい。声が出なかったことで、自信もなくしちゃってるみたいなんだ」

できるだけ冷静に答えようとしたけど。

あたしの言葉がそのまま胸に突き刺さったみたいに、菜美は眉をキュッとひそめた。

「そうなんだ・・・、戸田くんってなんかいつも余裕があるっていうか、みんなよりちょっと大人な感じだったから、それは・・・ほんとびっくり」

「あたしもそう思ってた。陽斗はいつも自由で、スイスイ空を飛び回ってて、あたしはいつもそれを見てる気がしてた・・・」


あたしのいつも見ていた陽斗は、あたしの好きだった陽斗はどこかに行っちゃったのかな。

もう、会えないのかな・・・?

そんな自分の思いに溺れそうになる。


「でも・・・、それがホントの戸田くんだったとは限らないもんね」

「え?」

菜美の思いがけない言葉に、思わず顔を上げた。

「彩香にはそう見えてただけでさ、戸田くんのホントの姿は別にあったのかもしれないよ?」

口調は優しかったけれど、菜美の目は真っ直ぐな光を放ってあたしを見ていた。

「ホントの姿・・・」

「うん。あたしもね・・・あの、夏の出来事で酷いことしたでしょ。それまでは一応自分のこと、普通の常識ある人間だって思ってた。でも、あたしのホントの姿はね、すごく嫉妬深くて、執念深い人間だった。」

「菜美、そんなこと・・・」

「ううん、ホントにそうなの」

菜美は強い言葉で続けた。

その様子は今まで見たことがないくらい真剣そのもので、あたしは何も言えなかった。

「あの出来事があって、あたしはホントの自分を見つけた気がするんだ。彩香も、もしかすると、今初めて、ホントの戸田くんに会えたのかもしれないよ?」

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