レモンドロップス。

「すみませんね、突然。こんな所にまでつき合わせてしまって」

陽斗のお父さん、倉本さんはちょっと恐縮したようにテーブルに目を落とした。

「いえいえ、暇ですから」

あたしはおばさんのように大げさに手を振りながら、不思議な気持ちを感じた。

今自分がいる場所が現実のように思えない。

なんで陽斗のお父さんと向かい合って、オレンジジュースなんて飲んでるんだろう・・・。



あたしたち2人は病院1階のカフェスペースにいた。

カフェスペースは庭側が全面ガラス窓になっていて、冬の日の最後の光があたしたちのテーブルまで鋭く差し込んでいる。

夕方の中途半端な時間のせいか、カフェにはあたしたち以外に誰にもいなくて、お互いの心臓の音が聞こえそうなくらい静かだ。



『少しお話できませんか』

思いがけない出会いの後そう言われて、あたしは無意識のうちにうなずいていた。

なんでだろう・・・。

陽斗のお父さんがあたしに何の話があるのか、全然想像できなかったのに。


でも、あたしを見つめる目はやっぱり陽斗のまなざしを確かに感じさせるもので、思わず引き込まれてしまったのかもしれない。


それに、あたしは聞いてみたかったんだ。

陽斗のこと、今までの出来事を、お父さん自身がどう思っているのかを。

あたしが口を挟める問題じゃないかもしれない。

それでも、陽斗の苦しみの原因を自分なりに見据えたかった。




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