レモンドロップス。
「・・・陽斗とは同じ高校なんですよね」
「あっ、はい!同じクラスです!」
ぼんやりしていたので、思わず弾けるように答えると、倉本さんはちょっと驚いたように目を見開いて、
「すみませんね、驚かしてしまって。陽斗のお友達からあの子の話を聞いてみたいと思ったもんですから。あんまり緊張しないでください」
その口元に笑みを浮かべた姿は上品でなかなか素敵だ。
こういう人のことをダンディって言うんだろうか。
差し出された名刺は、聞いたことのある会社の名前と部長の肩書きが書かれていた。
一流企業に勤めている偉い人なんだ。
おしゃれだし、体形もスマート、ついでに髪の毛もふさふさ、きっともてるタイプの人なんだろうなあ、ふとそんなことを思った。
「お聞きかもしれませんが、私はあの子の母親と離婚していましてね、今はあの子と一緒に暮らしていないので・・・」
「その話なら陽、戸田君から聞きました」
あたしは倉本さんの言葉をさえぎるようにはっきり言った。
その言葉の強さに、倉本さんは何かを感じたのかもしれない。
また、しばらくテーブルに目を落とした。
ちょっと気まずい沈黙だ。
「すみません・・・」
思わずあたしが小さい声で呟くと、倉本さんはゆっくり目を上げた。
その目元にはあの柔らかさが戻っている。
「間違っていたらすみません、陽斗とお付き合いされているんですか?」
ストレートな言い方に、自分の頬が熱くなるのを感じた。
「はい、今年一緒のクラスになったのがきっかけで・・・」
大人の人と向かい合ってこんなことを言うのはもちろん初めて。
それまで恋の話なんて、友達とはしゃぎながら、時にはヒソヒソ声をひそめてするものだった。
なんだか急に自分が大人の女になった気持ちだった。
くすぐったいけどちょっとだけ誇らしい感じ。
「そうですか、あの子も彼女がいるんですよね、そりゃそうか」
倉本さんは懐かしそうに、まぶしそうに目を細めた。
それからあたしは聞かれるままに話し始めた。
陽斗と出会った桜の庭のこと、あたしの部活のこと、陽風のこと、二人で見たコスモスのこと。
あたしたちの周りを廻った季節たちのことを。