レモンドロップス。
看護師さんがいなくなった後、もう一度陽斗の病室、いや元病室を覗き込んだ。
と、静かな部屋から風がふっと吹き出てあたしの前髪をなでた。
風に呼ばれた気がした。
そろりと病室に入り込み、陽斗のいたベッドに腰掛けてみる。
白い壁、白いカーテン、白いシーツ。
窓の外の景色も白く霞んでいる。
まだ間に合う、まだ大丈夫。
学校で聞けば何かが分かる。
そう思いながらも胸は小さくドキドキと鼓動を叩いていた。
嬉しいドキドキじゃない。
何か悪いものが背後から近づいてくる時の足音のような鼓動だ。
陽斗、どこに行ったの・・・?
その時、突然背中を冷たい思いが走った。
陽斗はあたしに会いたくなくて転院したのかな。
あたしが陽斗の行き場をなくしてしまったんだろうか。
思わず目を閉じると、熱いものがジワリとにじんだ。
頭がクラクラした。
まだ間に合うよ、まだ大丈夫だよ。
思えば思うほど、心が痛くて涙がこぼれた。
ごめん陽斗、苦しめて。
行き場をなくしたあたしの言葉は、白い部屋の中に雪のように積もっていく。