レモンドロップス。


第一発見者の宮崎章子、つまりあたしのお母さんの証言はこうだ。

「え、これ?夕刊を取ろうと思ってポストをのぞいたら、一緒に入ってたのよ」

彼女の証言を裏付けるように、それは夕刊と一緒に置かれていた。


補習を終えて、いつもどおりクタクタになりながら帰ってきたあたしは、テーブルの上の一通の手紙に気がついた。

醤油さしやピザ屋のチラシに混ざって置かれていたけど、なんだか周りの景色から浮いて見える。


「・・・彩香、なに固まってるのよ。買ってきたもの乗せるんだからそこどいて。はいこれ、あんた宛でしょ」


渡された白くて固い封筒。

味も素っ気もないけれど、表にはちょっと角ばった文字でしっかりあたしの名前が書かれている。

手紙を裏返したとたん、あたしは息が止まりそうになった。

裏側に差出人の名前はなく、代わりに小さく「T.H」。


まさか・・・、陽斗?


そんなわけない、そう思いながらも封を切る指が思わず震えた。


陽斗って、どんな字を書いたんだっけ。

何度もノートを覗いたはずなのに、ドクドクいってる心臓の音に邪魔されて全然思い出すことができなかった。


封筒の中に折りたたまれた白い便箋を取り出したとき、一瞬開くのをためらった。


陽斗だったらどうしよう。

陽斗じゃなかったら、どうしよう。


便箋を胸に押し当てて、そのまま一気に階段を駆け上がった。


「こらーっ、なにバタバタしてんの!」

と怒るお母さんの声を階下に聞きながら。


< 260 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop