レモンドロップス。


「久しぶり」

あたしが側に立つと、陽斗は固い表情のまま言った。


「久しぶり」

答えたあたしの表情も、たぶん固いままだったと思う。


「ベンチ座る?」

そう言いながら陽斗が立ち上がろうとしたので、

「いい、ここで」

あたしは止めると陽斗の近くに腰を下ろした。


桜の木にもたれて見上げると、枝先には二、三輪の花が開いているのが見える。


「やっと咲き始めたな」

「本当だね、やっとだね」


元気だった?学校には行ってるの?


当たり前の言葉が浮かぶのになかなか口が動かなかった。


下手な言葉が飛び出せば、シャボン玉みたいに膨らんだこの空気がはじけてしまう気がしたから。



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