レモンドロップス。
と、陽斗が言った。
「俺、会ったんだよ」
「え?」
「親父に」
驚いて陽斗を見ると、小さくうなずきながら陽斗は言葉を続けた。
「ついこの間。こっちに戻ってきたついでに連絡して会いに行ってきたんだ」
「ほんとに・・・?でも、大丈夫だったの?」
「俺のほうはね。でも向こうは大丈夫じゃなかったかも」
お父さんの話は、陽斗にとってタブーのはずだった。
あたしと陽斗がぶつかったした原因もそう。
なのに今、こうして静かにお父さんについて語る陽斗を見るなんて、信じられなかった。
「親父と2人きりで向かい合って話すなんて、一生しないつもりだった。いつか彩香が言ってたとおり、逃げてたんだよな、俺」
「あの時はごめん!あたしっ・・・」
「いいんだ、聞いてほしい」
あたしの言葉をさえぎって、陽斗は続けた。
「もう逃げない、それだけ親父に言いたかったんだ。仲良くなるとか許すとか、そんなことは考えられないけど、とりあえず親父と向かい合いたいって」
その言葉に嘘がないことは、陽斗の静かな表情と、噛み締めるような話し方から分かった。
あの冬の日に見た、倉本さんの小さな後ろ姿がふと頭に浮かぶ。